ウリモト、ビットコインの価格下落に泣く話。

 

冷静な判断の対極

 

 

「なんですか、世にもオソロシイ話って」

「実は昨日の話なんです」

「昨日?昨日何かあったんですか?」

「さっきビットコインの価格が15万円を越えたって言いましたよね?あれは昨日のことなんです」

「あ、そんな直近のことだったんですね?」

「昨日、朝少し時間があったので相場を見てみたんです」

「はい」

「価格が14万9,000円くらいでもう15万は目前になっていました」

「はい」

「私、12月に0.1ビットコインを9,500円で買ってから、どんどん上がるビットコインの価格を見て、正直ホクホクしていたんです」

「お小遣い2万円のウリモトさんにしてみれば5千円利益が出るというのは大きいですもんね」

「おっしゃる通りです。それもわずか20日そこそこでそんなことになったんです。もう浮かれていました」

「気持ちは分からなくはないです」

「でも思ったんです」

「何を?」

「あの時、0.1ビットコインだけじゃなくてもっと多く、0.2とか0.3買っていたら利益は2倍3倍になっていたのに、って。いや、もっと言えば思い切って1ビットコインを買っていれば今頃は5千円ではなく、5万円の利益が出ていたのに、って、そう思ってしまったんです」

「あー…」

「実はビットコインの価格が10万を超えた時も12万を超えた時も同じように思いました。でもその時は、いーや、こんな価格になってしまったらもう高すぎる。資金に余裕のない自分が手を出せる価格ではない。いくら値上がりしていようがここは静観するべきだ。自分としてはもうすでに0.1ビットコインを持っているんだからそれでいいじゃないか。それで利益が出ているんだからいいじゃないか。上を見たらキリがないし、この0.1ビットコインを大事に持っていよう、そう自分に言い聞かせていたのです」

「それは正解ですね」

「でも」

「でも?…まさか…?そういえばさっきウリモトさん、2回目って言ってましたよね?」

「…そうなんです。昨日、いよいよ15万をも超えようとするビットコインの価格を見て、『これはまだまだ上がる!』と思ってしまったんです」

「9,500円の時から150%も上がっているのに?」

「ええ。恥ずかしい話ですが、欲をかいてしまったんです。15万はおろか、20万まで上がっても不思議じゃないと思いました。というか必ず上がる気がしたんです」

「1ビットコイン20万円になると?」

「はい」

「いくらなんでも高すぎるとは思わなかったのですか?」

「思いませんでした。それどころか、今買っておかないと、後になって価格がもっと上がった時、ああ、あの時買っておけばよかった、と後悔すると思ってしまったのです」

「…で、買ってしまったわけですね?」

「はい…1ビットコインが15万目前の時でした。それが昨日のお昼前の話です」

「昨日のお昼前って…ウリモトさん、昨日はお仕事の日でしたよね?」

「ええ、そうです。ですから、わずかな隙間時間を見つけてエイヤッって…」

「勢いで買ってしまったと?いくらで買ったんです?」

0.1ビットコイン14,998円だったと思います」

「同じものを前回より5,000円以上高く買ったわけですね?」

「はい」

「自分でおかしいとは思いませんでしたか?」

「思いませんでした。今乗らなきゃ、としか考えられませんでした」

「完全に冷静さを欠いていたわけですね」

「恥ずかしながらその通りです」

 

 

その夜の衝撃ともう一つの衝撃

 

 

「でもここまでならそんなオソロシイ話ではないですね」

「ええ。ここからが問題なんです」

「なんとなく展開が分かるような気がしますが」

「アフィリエさんの思った通りです。昨日、家に帰って遅い夕食をとり、さあ、いくらに上がったかナ?ってパソコンを開いたんです」

「本当に上がることだけしか考えていなかったんですね」

「はい。上がることしか考えていなかったです。なので、最初に取引価格を目にした時、それが表す意味がよく理解できませんでした」

「いくらになっていたんですか?」

「昨日の11時ごろだったと思います」

「ええ」

「およそ115,000円でした」

「あー…」

「私は何度かその数字を頭の中でくり返してみました。115,000円、じゅういちまんごせんえん…って。確か自分が買ったのは、じゅうごまんえん…だから…これは」

「…」

「『暴落してる』と思わずつぶやきました」

「暴落?とまで言うかはどうか…」

「私にとっては暴落です。朝、15,000円で買ったものがたった半日で11,500円になってしまったのですから。何もしていないのに3,500円吹っ飛んでしまったのですよ?!」

「辛いところですね」

「辛いどころじゃないですよ。3,500円といえば私のささやかな飲み代よりも高いんですよ?昼食なら7日分、発泡酒なら30本です。発泡酒30本ですよ?そのお金がたった半日で…」

「…」

「しかもあんまりじゃありませんか。何も私が買った直後にドカンと下がらなくてもいいじゃないですか。どうしてあのタイミングで下がりだしたんでしょうか?」

「それは私には分かりません」

「ああ!あの時、もう少し待てばよかった!あと1時間でも待てたなら、こんな高い時に買わずに済んだのに!こんな高値でつかまされることもなかったのに!ああ、どうしてあの時!」

「あの~」

「どうしてあの時ビットコインの相場を調べてしまったんだろう!?どうしてあの時急いで買ってしまったんだろう!?」

「あの~ウリモトさん?」

「なけなしのお金で買ったものがその直後から暴落するなんて!!あんまりじゃないですか!ヒドイじゃないですか!本当にわずか1時間後に下がりだしたんですよ?」

「あの~」

「どうして私はこんなことになってしまうんでしょう?!どうしてこんな星の下に生まれたんでしょう?!ああ、いったいどうして?!」

 

ドンッ!!

 

「ど…?」

 

「どうしてどうしてうるせーんだよ!さっきから黙って聞いてりゃ勝手な泣き言ばかりほざきやがって!どうしたもこうしたも全部自分で決めたことだろーがっ!!自分でビットコインを買ったんだろーがっ!誰かに強制されて買ったわけじゃないだろ?自分の意思で買ったんだろ?それで価格が下がったからって、そんなの自分のせいじゃねーか!!!星の下もへったくれもねーんだよ!ホントに冗談顔だけにしろッ!!!」

 

 

シーン…

 

「ア、アフィリエさん?」

「あら?」

「す、すみま…」

「あ、あら?」

「も、申し訳ありません…」

「あら?私今なんて…?」

「すべてはわたくしの責任でした。深く反省を…」

「あら、ウリモトさん、いやだ、今のはついちょっと」

「今後は二度とこのようなことのないよう…」

「アハハ、ウリモトさん、お仕事じゃないんですから…それにしても私ったら…オホホホ」

「アフィリエさん、いや、アフィリエさまにもご迷惑をおかけしてしまい…」

「さまだなんて、ウリモトさん、どうしちゃったんですか?さ、話を元に戻しましょう?」

 

 

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